ワールドカップの“最高の去り方”

オランダVSコスタリカ

2014・ブラジルワールドカップ・ベスト8、オランダVSコスタリカ@アレーナ・フォンチ・ノヴァ・スタジアム。

結論から書いてしまうが、ブラジル発、コスタリカのフェアリー・テイルは、90分間(延長の120分間含め)では敗れることなくページを閉じることとなった。

本当に素晴らしいチームだった。

このゲームでも、単に引いて守るのではなく、最終ラインを高く設定し(オランダを10回以上ものオフサイドの網に引っ掛けた)、好守にメリハリが効いていた。

今大会の最高のGKかは分からないが、レバンテの守護神でもあるケイラー・ナバスが神懸かったセーブを連発。ポストやクロスバーの助けも借りて、ファン・ペルシーやスナイデルのシュートの雨を弾き返し、120分間のオレンジの凄まじい猛攻に耐え凌ぎ、1発勝負のペナルティキック合戦までチームを導いた。

ウルグアイとイタリアを沈め、オランダには得点を許さなかった。専守防衛(プライオリティは守備ではあるが)のみのバス横付けではない。チャンスとみるや勇敢にカウンター・アタックを仕掛け、決定機を創造し、オランダが大西洋を渡ることとなってもおかしくない状況を生み出した。

賞讃しかないだろう。

誰1人サボることなく献身的に走り、懸命に身を投げ出し、持てるもの全てを出し尽くし、観る者を味方に引き込みようやくここまで辿り着いたのだ。多少の運にも恵まれたかもしれないが、身体能力とスキルに劣るアウトサイダーが、ソリッドにコレクティブに闘い抜いた証左といえるだろう。

代表はこうでなければならない。

これでこそ眠らずに、声を枯らし、懸命に応援したかいがあるというものだ。

このゲームを視聴して、僕はそう思わずにはいられなかった。そして、日本代表に改めて忸怩たる思いを想起させた。

「自分たちのサッカー」を掲げ、講釈を述べるはかまわない。僕にも思う、信奉するプレイスタイルはある。しかし、それには「全てを出し切って」という枕詞がなければならない。戦う姿勢と矜持、全てを出し切るメンタリティがサムライ・ブルーには足りない(ように見える)。

ヨーロッパでプレイし、小洒落たスキルとマインドを持ったプレイヤーが増えた日本代表は、次のステージに確実に進化した。そしてその次へ。精神論を語る人間には嫌悪を抱くが、「全てを出し切る」という簡単かつ難しいメンタルとアクトに立ち戻って、ロシアの舞台に立ってもらいたいと痛切に思った日曜日の朝となった。

コスタリカ代表に、心から惜しみない拍手を贈りたいと思う。

 

コスタリカ代表

ケイラー・ナバス

ケイラー・ナバス

シェイクハンド

コスタリカ代表

我々はピッチで全てを出してきた。このゲームでもそうだ。全員が最高の仕事をしたんだ。歴史を作り、そして今夜また新しい歴史の扉を開きかけた。今大会において最高のアタッカー陣を擁するオランダ相手に、120分間では負けなかったんだ。最後の結果は“クソ”だったが、おそらくワールドカップの舞台から去る31チームの中で、最高の去り方だろう』

ユルゲン・クロップ流にコメントを書いてみた(笑)。そして、最後にこのオヤジのことは記しておかなければならないと思う。

 

ファン・ハール

『私は私だ。自信家であり、尊大であり、支配的であり、誠実であり、勤勉であり、革新的だ』と語ったことがある、神経症的な戦術の天才でもあろうルイス・ファン・ハール。

ここまで全てのゲームで素晴らしい指揮ぶりを披露し、オランダをここまで導いてきた。そして、このゲームでもアディショナル・タイム終了寸前で正GKのシュレッセンを第2GKのクルルと交代させ、そしてそのクルルがペナルティを2本止めて、見事その期待に応えた勝利した。

『GKにはそれぞれ異なった特徴がある。ティム(・クルル)は手が一番長く、PKをストップするのに適しており、止めるのもうまい。それがうまくいかなかったら、私の交代策は失敗と見なされる。それがフットボールの世界というものだ』

『試合中、ロン・フラールは膝を腫らしていた。ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ロビン・ファン・ペルシーも力を使い切っていた。交代策は少しトリッキーだった』とも語ったが、ドンピシャの采配となっている。

23人の招集メンバーのうち、21人をピッチに立たせ、過去にない結束力で頂点を目指すオレンジ軍団。セミファイナルの相手は『神』メッシのアルゼンチン。イグアインの僥倖(塩試合だったなぁ)で勝ち上がった冴えないアルゼンチンも凌駕しそうな勢いだ。

寝不足はまだ終わらない。

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