オールド・テロリスト

オールド・テロリスト

を読んでみた。

NHK西口玄関爆破、東急池上線「池上駅」商店街での刈払機による無差別殺傷、新宿歌舞伎町映画館での毒ガステロ。物語は、凄惨な無差別テロルともに進んでいく。

語り部は、『希望の国のエクソダス』に登場したフリーランスのジャーナリスト、セキグチ。『オールド・テロリスト』のセキグチは、大手出版社での職を失い、それに伴って充実感を失い、(妻に見限られ)家庭を失い、プライドを失った物哀しい五十四のオッサンだ。

そんなドン底のセキグチに、(元の職場に)テロを実行するからルポを書けと指名(事情は後々わかるのだが)があって、元職場の上司から仕事を受けてテロルに巻き込まれていく。

取材で遭遇するテロルと非日常に生きる人たち。(叔父に性的虐待を受けた過去を持つ)エキセントリックな美しい女性、カツラギ。そのカツラギのカウンセラー心療内科医、アキヅキ。アンダーグラウンドに強大なネットワークを築いた死にかけのフィクサー。そのフィクサーに片腕を切り落とされたカツラギの叔父、ナガタ。イラン人の父親と日本人の母親を両親に持つアンダーグラウンダー、ジョー。

アンダーグラウンドのネットワークから飛び出し、暴走しだすテロルの首謀者たちは、七十歳から九十歳の、戦争で殺されず食糧難時代をサヴァイヴし、病死も自殺もせずに現代社会で経済的に圧倒的成功を収めリスペクトされている後期高齢者の老人達。アウト・オブ・コントロール・シニアのミツイシや太田やカリヤは、若々しく、元気で、楽しげだ。

そんな老人たちが、腐った日本を変えようと、自分史を記すと四百字詰め原稿用紙一枚にも満たない存在感が極めて希薄な若者たちを利用し、粛々とテロルを実行していく。

最高にショッキングかつエキサイティングな設定と描写で、物語はスリリングにドライヴしていく。

お決まりの「甘え」や精神安定剤、シリアスなシーンにも係わらず(カツラギの美し過ぎる脚)セクシャルな描写を挿入し、何度も出てくる「無視された」というセンテンス。新聞やテレビ等のマスメディア、シタリ顔で恥を晒す無知な専門家を徹底的にコキ下ろすシーンに、(僕もその一人なのだが)ファンは村上龍を思う存分堪能することができるだろう。

『(マスメディア)あの連中は、自分を否定したことがないし、疑うこともない。わからないことは何もないとタカをくくっている。わかるという前提で報道し、記事を書く。だけど、たいていのことはわからないんだ。わからないことはないというおごりがあるので、絶対に弱者に寄り添うこどができないんだ。くそったれ』

ラストの、老人たちと(自国の都合から介入してくる)米海兵隊との壮絶なバトル・カタストロフィ。(老人たちが満州から持ち帰った)88ミリ対戦車砲の存在の件が秀逸で、セキグチが最後の最後で意を決するするシーンに、間違いなく満足感を得るだろう。

久しぶりに読書をしたが、間違いなく凄い一冊だった。僕は、オフにまる二日にかけて、存分にこの唯一無二の快作(怪作?)を満喫することができた。

なかなか梅雨が明けない7月初旬、大阪にて。

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