和歌山だけじゃないゼ

智辯学園

第88回選抜高校野球決勝の組み合せは、高松商業(香川)対智辯学園(奈良)。

ヒリヒリとした投手戦にケリを付けたのは、自らのバットでだった。

延長11回の裏、2アウト1塁の場面でバッターボックスに入った(6番バッターの)智辯学園のエース村上くん。ここまで4打席2三振だったが、甘いストレートを逃さなかった。高松商業のエース裏くんのストレート(少しシュート回転して真ん中付近来た)を完璧に捉えた打球がグングンと伸びて行き、懸命にグラブを出すセンターの頭上を越えて行った。高松商業が誇る韋駄天センター安西くんでも及ばない鋭いライナーの打球がフェンスに到達し、懸命の中継プレイも少し及ばず1塁ランナーがホームに滑り込み、熱戦に幕が降ろされた。

準決勝の龍谷大平安戦に続く、2試合連続のサヨナラ勝ち。前評判は決して高くは無かった奈良の智辯学園が掴んだ初の栄冠は、(決勝でのサヨナラツーベースが無くても)エースの村上くん抜きには語れない。初戦(福井工大福井)の完封(4-0)を皮切りに、2回戦の鹿児島実業戦は1失点(4-1)、準々決勝の滋賀学園戦も2安打完封(6-0)、龍谷大平安戦も1失点(自責点0の2-1)とほぼ完璧に近い内容で一人で投げ抜いてきた。

140㌔台のストレートも投げるが、130㌔台でもスピンの効いた伸びのある球筋が印象的な良いピッチャーだ。そして、(松坂大輔くんみたいに)投げれば投げるほど良くなっていく感じが頼もしい。170㎝前半の体格だが、馬力があって打ち辛いピッチャーなのだ。

この決勝戦も8回に1失点してしまうが、完璧にゲームを作って(何回か3塁にランナーを背負うピンチがあったが)サヨナラゲームを演出してくれた。5試合で計669球の熱投に、決勝でのサヨナラツーベース。素晴らしいの一言だ。

智辯と言えば兄弟校の智辯和歌山が名実ともに高校野球界をリードしてきたが、奈良智辯もひとつの歴史を作ることとなった。プロに行った青山くんや岡本くんが居ても成し得なかった悲願の優勝は、チーム一丸となった証だろう(龍谷大平安戦の9回裏の4連打がまさにソレだ)。エラーをしても全員でカバーする。下級生の3番4番も打つが、7番以降の下位打線も抜け目なく強烈な当たりを飛ばす。超高校級は居ないが纏まりのある良いチームだった。

智辯和歌山に並ぶセンバツの優勝。先を行く和歌山に追い付くためには、夏も戴きに立つ必要がある。村上くん以外にもう一人ゲームを作れるピッチャーが出て来れば、その可能性(全く簡単ではないが・・・)を追うことが出来る。このゲームをライブで観ていて、僕はそう実感した。

忘れられない1球二つ

龍谷大平安

【その一】第88回センバツ高校野球ベスト8・第2試合、明石商VS龍谷大平安。

いいピッチャーだったなぁ。その名は、明石商の吉高くん。上背は無いが、キレの良いストレート(146㌔)とストレートと同じ軌道からのスプリットに時折見せる縦のカーブを駆使する右の本格派。初戦の日南学園(2失点)、二回戦の東邦(完封)の結果の通り、このゲームでも0を重ね味方の得点を待つ。最近の甲子園では、瀬戸内の山岡くんと中京大中京の上野くんに続く(上背が無くても)良いと思えるピッチャーだった。

ゲームは延長12回、2アウト満塁から左中間に運ばれ(2-1)吉高くんの春は終わった。2ストライクに追い込んでからの最後のスプリットが真ん中高めに浮いてしまったが、コレは責めることは出来ない。悔やまれるとすれば、この回の先頭バッターに甘く入ってしまったストレートをライト戦に2塁打されたことだろう。送りバントを挟んでからの満塁策。2アウトにしたが、3つ目のアウトを取ることは叶わなかった。

吉高くんは、明石商は、夏に戻ってくることは叶うだろうか。激戦の兵庫。もう一度その姿を聖地で見たいのだが・・・。

【その二】第88回センバツ高校野球ベスト8・第3試合、木更津総合VS秀岳館。

あとアウト一つが遠い。1-0で9回裏2アウト3塁。木更津総合のエース早川くんが、5番バッターに投じたフルカウントからの渾身のインコースへのストレートがボールと判定された。ストライクでもおかしくなかったと思う。ファボールで3塁1塁。次の打者がセカンド横に放った打球がライトに抜けて追い付かれる。個人的には取ってあげて欲しかった打球だった。最後はセンターオーバー(これもあと少しで取れたが・・・)に運ばれ熱戦(これも2-1)にピリオドが打たれた。

吉高くんのスプリットと早川くんのインコースへのストレート。僕はしばらくこの2球を覚えていたいと思う・・・ということで、第88回センバツ高校野球はベスト8が終わりました。仕事もせずに2試合を堪能した訳ですが、ベスト8はやはり面白いですね。特にセンバツは一日で4試合を行うので一日楽しめます。ベスト4に勝ち上がったのは、あとは智辯学園と高松商。智辯学園は投打に隙なく6-0で滋賀学園を下し、高松商は海星を活発過ぎる打撃を持って17-8で下しました。

一日休養日を挟んで、智辯学園対龍谷大平安、秀岳館対高松商のベスト4。

ナイスゲームが観れるとイイなぁ。

 

完全にやってますね

秀岳館

元高校球児だった僕の後輩は、確信を持ってそう言った。

第88回センバツ高校野球一回戦、花咲徳栄VS秀岳館。

僕と後輩は、仕事もせずこのゲームを観ていた(オイオイ)。今大会注目の花咲徳栄(埼玉)の左腕高橋君対九州王者秀岳館(熊本)。秀岳館打線が高橋君を攻略できるかがポイントのゲームだったが、(問題行為)それは4回の裏に起こった。2塁走者がバッターにピッチャーが投げるコースまたは球種を教える。3回から怪しかったが、明確な行為が見てとれたのか球審がセカンドランナーとベンチの監督に注意を与えた。

このゲームを観ていて、この出来事が起こる前から僕と後輩は

徳栄、サインを盗まれてんじゃね?』

『そうですね。その可能性が高いですね』と話していた。

その理由は、花咲徳栄のキャッチャーが最初は外角に構えていて高橋君が投げると同時に内角に動く(その逆も多数)という行為をずっとやっていたからだ。また、(単に秀岳館のバッターのスキルが高いだけかもだが)ゲーム序盤から高橋君が投げるフォークや低めのスライダーを完璧に見極めていて『球種もバレてますね(伝達してますね)』と後輩は確信を持って語っていた。

3回に1点を先制した花咲徳栄。その裏に長単打を集め一挙5得点で逆転した秀岳館。昨夏、花咲徳栄の甲子園ベスト8進出の立役者だった高橋君を打ち砕いた秀岳館の打撃は見事だったと思う。ゲーム自体は、中盤に1点づつ取り合い終盤8回に花咲徳栄が3点を返し1点差まで追い縋す好ゲームとなったが、最後は秀岳館が1点差を守り逃げ切った。

件の伝達行為はクロだったと思う。高校野球では禁止されている行為なのでやってはダメだ。ゲーム後、伝達行為をしていた(と思う)選手は『ユニホームの上着が出ないようベルトに手をやっていた』とスッとぼけ、鍛治舎監督は『馬鹿らしいことをやってしまった。非常に残念です』と他人事のようなコメントを発し『そういうことをしないように指導してきた。教育の一環ですから』と選手に責任転嫁した。

高校球児も監督も大変だ(心底そう思う)。

センバツの組み合せ抽選会後に後輩と飲んだ席での予想は、東邦(愛知)と大阪桐蔭(大阪)の決勝っていう誰もが予想する予想とは言えない予想で意見の一致を見たが、秀岳館には是非ともベスト8で大阪桐蔭(今日の第一試合で土佐に9-0で快勝し順当にいけば対戦する)を破って、決勝で東邦に勝ってもらいたいと思う。対戦相手の分析とそれを活かすスキルにかけては素晴らしいものを持っているし、オール枚方ボーイズ出身者で固めたレギュラー陣の団結には期待できる。

春はセンバツから。

秀岳館が花巻東に続いてヒールとして甲子園に認定された第88回センバツ。めげずに頑張ってもらいたいものである。