起死回生。
九死一生。
一昨シーズンのファイナルでのセルヒオ・ラモスの一発を思い出すトーマス・ミュラーの値千金の一発が、バイエルンを(ペップ・グアルディオラを)救うこととなった。まぁバイエルンの自作自演と言ってもいいかもしれないが・・・ね。
2015-2016・チャンピオンズリーグ・ベスト16・セカンドレグ、バイエルン・ミュンヘンVSユヴェントス@アリアンツ・アレーナ。
敵地のファーストレグを2-2で終えていたバイエルン。勝ち切れなかったが貴重なアウェイ・ゴール2発をトリノから持ち帰り、この日はホーム。ほとんどの人が勝ち抜けを予想していたと思うが、フットボールはそう簡単にはいかない(改めて・・・)。
5分に単純なロビングボールの処理をノイアーとアラバの連携が上手くいかずリヒトシュタイナーに引っ掛けられて流れたところをポグバに蹴り込まれ、あっさり失点してしまう。声を荒げるノイアー。何かしら不安げでバタつく(そう見える)最終ライン。
28分にはモラタに自陣から50メートル以上の独走を許し(ベナティアの対応が緩くキミッヒがあっさり躱された)、最後は右サイドを並走してきたクアドラードに(ラームのスライディングを秀逸に躱す)美しい切り返しからニアをブチ抜かれ0-2とされた。前半30分も経たずにアウェイ・ゴール2発のアドバンテージを吐き出し、逆に2点以上取らなければならなくなった。
しかし、モラタをトップに置いてそのすぐ下に(横に?)ポグバを配し、残りが綺麗な2列を形成したユヴェントスをなかなか崩せないなか前半を終えることとなる。ピッチをワイドに使い相手ディフェンスを広げさせてウイングの突破から得点を上げるミュンヘンだが、白と黒の壁の素早い寄せにほとんどチャンスらしいチャンスもないままだった。縦への突破を完全にシャットアウトされ、シャビ・アロンソの楔は入るが、その後はノッキングしなかなかエリア内に入っていけなかった。
後半、『賢人』ペップ・グアルディオラは策を敢行。全くダメだったベナティアをベルナトに代えてアラバを中央にしてカウンター対策を取りつつ、左右のウイング、ドウグラス・コスタとリベリーの位置も変えた。利き足と同じ位置に入った両ウイングの縦深部への突破からゴールを窺うバイエルン。しかし状況は変わらず時間だけが過ぎて行った。
次なる『賢人』の策は60分、キングスレー・コマンをシャビ・アロンソに代えて投入しサイドでの起点、更なる縦への突破を目指した。徐々に疲弊するユーヴェの両サイドと下がりはじめるバックライン。左右からクロスの雨を降らせるバイエルン。何とか跳ね返すユヴェントスだがボールをキープ出来ず耐えるのみとなっていった。右のコマン、左のリベリー、抉じ開けようとするバイエルン。ケディラをストゥラーロ、モラタをマンジュキッチに代えて耐えていたがついにバイエルンが抉じ開ける。
73分。右サイドでボールを残したコマンのパスをドウグラス・コスタがクロスを入れる。そのクロスにピンポイントで合わせたレヴァンドフスキ。
あと1点。残り時間は、アディショナル・タイムを入れて20分。十分に時間が残されていた。ユヴェントスに前へ行く力は残されておらず、あとは1点を守りきるのみだった。バイエルンのハーフコート・オフェンス。
そして、劇的な冒頭の画像の一発はアディショナル・タイムの90分+1に訪れた。エブラが不用意にボールロストはしたが、そのボールを奪ってからのショートカウンター。右サイド深部からコマンが入れた秀逸なクロス。レヴァンドフスキの1点目と同様の強烈なトーマス・ミュラーの強烈なヘッド一閃。そこにいるトーマス・ミュラーの値千金の一発でゲームはエクストラ・ラウンドへ進むこととなった。
もうユヴェントスに攻めるチカラは残されていなかった。
108分。ミュラーとのワンツーを完成させたチアゴ・アルカンタラ。
ポグバを潰して自陣からカウンターを完結させたキングスレー・コマンの美しくも残酷なトドメの一発。
ボール・ポゼッション69%対31%。
アテンプト26対16。
ショット・オン・ターゲット8対11。
アグリゲート・スコア6-4。
『ハーフタイムで、これ以上失点するわけにはいかないが、とにかく1点を返せばどんなことでも起こり得ると選手たちに言った。特にドイツ人魂を発揮すればね。そしてリベリーとコスタを中心にもっとサイドを抉るように指示した。後半開始後はユーベがいくつかチャンスをつくったが、その後はゲームを支配できた。それがフットボールというものだ。ほんの1分前までまるでダメだったものが、見違えるように良くなったりする』
『ユヴェントスは本当に強いチームだ。序盤、我々は非常にナーバスになっていた。3点目を奪われていたら、どうなっていただろうか。しかし、次のゴールは我々が奪い主導権を握ることができた。特に延長戦は、バイエルンが一方的に攻める展開になった』
ほとんど死にかけていたが、歴史的逆転勝利でサヴァイブしたペップ・バイエルン。ボール・ポゼッションの矜持を示すコメントが、らしい。
『プランどおりじゃなかった。ちょっとクレージーなゲームだった。スコアのことじゃなくて、僕にとってものすごく変な試合だったと思う。ユーヴェの守備はほぼマンマークで、僕はあまり試合に入り込めていなかったからね』
『相手に2点を奪われれば、試合は違ったものになる。メンタル面も含めてね。ホームでの試合だし後半には2点取れると信じていたよ。もちろん簡単だとは思わなかったけどね。僕らにとって大事だったのは焦らなかったこと。3点目を許せば敗退が決まっていたわけだからね』
と語ってくれた、往年のフィリッポ・インザーギのようにソコにいるトーマス・ミュラー。
侮れない。